スクールニュース vol.412 編集部より
富山県小矢部市のメルヘン建築
富山県魚津市の今年開校した公立学校初の木造3階建て校舎の取材を計画中、以前訪れたことのある小矢部市の「メルヘン建築」は、どうなったであろうと思い起した。
今から約25年前に、長倉康彦/東京都立大学(現、首都大学東京)名誉教授より紹介され、富山県福光町(現、南砺市)の学校整備の現況を取材に訪れた際、時間の余裕が若干あったので、小矢部市メルヘン建築の学校、保育園などを見て回った。 小矢部市の「メルヘン建築」といえば、1976年から1992年の正得駐在所を最後に、同市のメルヘン建築事業は打ち切られたとのこと。このメルヘン建築事業は、一級建築士でもあった当時の故松本正雄小矢部市長が市長に当選後、「文化的価値を持ち、地域の人びとに親しまれ、愛される建物を作りたい」ということで、同市の公共建築を新築する際に西洋風の有名な建築物を模して建築をしたもので、これらをメルヘン建築と命名した。同市内に35棟ある。当時、このメルヘン建築は、マスメディアに取り上げられ、「小矢部のPRになる」、「税金の無駄遣いだ」など賛否両論を巻き起こしている。(注1)
(注1):昔の取材写真は、フィルム時代で保存状態が悪く使用できないため、小矢部市及び観光協会写真を利用させていただいた。富山取材後は、現場写真を掲載したいと思う。
小矢部市では、これらの公共建築物が老朽化、少子化、公共施設削減による行財政改革が背後にあって、徐々に姿を消すことになりそうだ。
これまでに、長野県松本市の洋風校舎開智学校がモデルになっていた石動幼稚園は、既に解体されている。また、保育園5棟も新設される2つのこども園に統合されて解体される見通しだという。同市民の間では「立派な建物でもったいない」という声もあると聞いている。再利用といっても老朽化設備などの改修費用に加え、1施設当たり年間100万円以上の維持費など市財政への負担は大きい。
中でもメルヘン建築の代表格でもある小中学校は、少子化や人口減少、財政難などから学校など施設規模が大きくなるほど再利用が難しいのではないかと思われる。
いずれにしても、魚津の学校取材の流れで実態を見学してみたいと思っている。
※参考:1970年代から建設事業の実施に際し、総工費の1%前後を芸術・文化的用途に用いることを促し「文化のための1%システム」呼称で、建築空間へ具体的に空間のシンボルとなるモニュメントの設置や、絵画・彫刻などの芸術作品などが導入推進された。その後80年代までは、学校施設を始めとする多くの公共建築事業へ普及したが、90年代以降、公共建築事業における「文化のための1%システム」は、半ば立ち消えとなってしまった。
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