スクールニュース vol.491
今(だから)できることを実行する(つくし野ビオトーププロジェクト2020年5月)
先日、ある学校の方と話をしていてこんな話題になった。『学校の実習には「今」しかできないものがある。分かりやすい例は田植え。学校では学年も決めてカリキュラム編成をするので、今年田植えをするはずだった学年は経験しないで卒業することになってしまう』と。
昨年度末から続く学校の臨時休業は、新型コロナウイルス感染者数の減少と緊急事態宣言の段階的な解除によって再開する地域も増えてきた。同時にスタートが遅れた令和2年度の学びをどうするのか、模索も始まっている。ただ、冒頭の四季(自然)に関わることは取り戻しようがない。
「つくし野ビオトーププロジェクトは毎年行われているから来年があるよ」と考えるのもまた早計だ。昨年の今頃、改元によるお祝いムードだったことを覚えているだろうか。あのとき「来年はオリンピック・パラリンピック」と、こんな状況を想像した人などいないはずだ。
先のことなど分からないのだから、今できることは今やる。この姿勢を自律につなげて毎日を過ごす機会にできれば現状だって…、なんてダラダラとテレワークをしながら考えた。
今だけである2020年の5月。17日の日曜日、東京はその前後が曇り空で覆われた肌寒い気候の中、見事な五月晴れの日となった。例年、5月の定例活動では特色のひとつであるサツマイモの苗を植える。これは今しかできず、見送れば秋の収穫はない。しかし、例年のように数十人の子どもがウネに一列に並んで一斉に植えることは難しい。そこで、プロジェクトは苗を植えるのではなく、希望者に苗を配ることを考えた。
今回も、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえて、時間別、家族ごとに参加する方法で行われた。プロジェクトの専用畑ではコマツナやホウレンソウなどの葉物野菜からタマネギのような根菜まで、食べるところが異なり、伴って収穫の方法も異なる複数の作物を収穫できる。それに加えてサツマイモについて話す時間をつくり、肥料袋をそのまま利用した袋イモ栽培の方法を提案、希望者に苗を配布した。
例年通りの活動ができないこともあるが、家族で自宅で体験してほしいというねらいもあるのではないか。以前、小池常雄プロジェクトリーダー(環境カウンセラー)が自身の世代と比べて保護者世代の自然体験不足を感じることもあると話していたのを思い出したからだ。
栽培のプロではないから、天候などさまざまな条件に左右され、残念ながら失敗することもあるだろう。しかし、こんな状況ではなかったら自宅でサツマイモを育てることを考えもしなかった参加者もいるはずだ。結果は秋に分かる。プロジェクトのブログなどに、うまくいった例、いかなかった例が集まり、その原因をスタッフやみんなが考える機会になればといいと思う。
ところで、今年は畑に植えないのか。誰もが気にすることだ。自分の活動が終わってからも保護者と一緒に散歩を続けて畑の様子をのぞいている顔もちらほら。
すると、やっぱり! 畑ではトラクターが土を耕し、スタッフがウネをたて始めた。活動に熱心な子を止めたくないのも本音。距離や接触に注意しながら、200本以上の苗をスタッフ含めて10人くらいで一気に植えた。ただ、焦ってしまったのか最初は浅かったり、向きを間違えたりして直される場面もちらほら。
急ぐことと、やるべき手順が両立するのはもう少し先か。
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