スクールニュース vol.639
全国的に新たな設置が進む夜間中学校について
夜間中学校と言えば、私にとって思い起こされるのが、我が国の映画界に、名作を送り出している名監督、山田洋二さんの学校シリーズの第1作「学校」である。同作品は約30年前に公開され話題となった作品であるから当然ご存じであろうと思う。多様な境遇や事情で、中学校教育を受ける事が出来なかった幅広い世代が通う下町の夜間中学校を舞台に、教師との交流を描いた数ある同監督の名画の1つでもある。中でも、私自身今は亡き、名優 故田中邦衛さんの名演技が心に残る。
さて、映画についての話はさしおいて夜間中学校の現状からお話しすることにする。2016(平成28)年、超党派による議員立法により「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が制定され、2017(平成29)年3月には、法第7条第1項の規定に基づく「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」が文部科学省から示された。これにより、各地で、夜間中学等に関する協議会などが立ち上げられ、公立夜間中学校の設置など、義務教育未修了者等に対する教育機会の提供のあり方について検討されるようになってきた。
全国に徐々にではあるが、公立夜間中学校が設置されてきている。2022(令和4)年4月現在の文部科学省調べによると、15都道府県34市区の40校である。しかし、2010(平成22)年の国勢調査では、「都道府県別の未就学者数の状況」で、全国に13万人という実態から推測してもまだまだ不足しているといえる。また、現在の在籍生徒も、外国籍が80%と高い率となっていることから、日本語学校化している点も認めざるを得ないが、日本で生活する外国人や、仕事などで来日する外国籍の人が増えるなど、多様化する社会への対応ともいえ、さらには不登校者、未就学者などにとっても、公立夜間中学校は学びのセーフティネットにもなっているといえるのではないだろうか。2021(令和3)年の当時の菅内閣総理大臣も、衆議院予算委員会で公立の夜間中学校設置は、今後5年間で全ての都道府県・指定都市に少なくとも1校の設置を目指したいとしている。
その施設整備は、少子化により余裕教室、廃校が増加している点から見れば、その有効活用に力点を入れるべきではないか。コロナ禍が収束すれば、来日者も増加するとともに、わが国もグローバル化に再度の拍車がかかるであろう。地方自治体も財政難で厳しい状況であるのもわかるが、国も下記の補助制度メニューを用意しているので是非活用してもらいたい。
2022年4月、北海道地区の札幌市に「札幌市立星友館中学校」、九州地区の福岡市に「福岡市立福岡きぼう中学校」が開校した。また、四国地区には「高知県立高知国際中学校夜間学校」、「徳島県立しらさぎ中学校」が2021年4月開校されており、香川県三豊市に、同市立「高瀬中学校」が2022年4月に開校している。したがって全国の公立夜間中学校設置は、2022年4月時点で、15都道府県に40校が設置されている。
※5月17日19時 過去の資料に基づいていた内容を修正しました。
過去のスクールニュース → http://www.schoolnews.jp/category/schoolnews/
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